いじめに苦しむ皆さんに知ってほしい「マンガ」を紹介するサイト

教職員の皆様へ

このサイトは、教職員の皆様が子どもたちからいじめ被害の相談を受けた時の対応について紹介することを目的につくりました。「いじめ被害の相談をうけたら」のフローチャートや専門家の声を参考に、一人でも多くの子どもたちがいじめ被害から救われることを願っています。

いじめ被害の相談をうけたら

もしも、児童生徒からいじめ被害の相談を受けた際は、以下の対応フローを参考に対応を進めることをお勧めします。

相談してくれたことを「ねぎらう」

ねぎらう

いじめ被害者が、教員に相談することはやはり、相当なハードルがあります。STOPitによる通報も同様です。「よく相談してくれました」「相談することは大変だったね」と相談したことを労ってください。

いじめ被害の状況をよく聞く

いじめ被害の状況をよく聞く

できたら、他の人の目が届かない場所に移動し、いじめの被害の状況を掴みましょう。子どもは全ての被害を話せないかもしれません。

被害状況を確認する

被害状況を確認する

いじめの事実がつかめたら、まずは被害者の子どもの状況を確認してください。これ以上被害が拡大しないこと、本人の苦痛や困り感が解決する方向性を模索します。

素直に聞けない場合は

素直に聞けない場合は

教師は、学級を経営しています。もしかしたら、いじめ被害を訴えている子どもは対人関係能力に課題もあり、「それはあなたが悪いのではないか」と思ってしまうかも知れません。しかし、法律でのいじめの定義では「被害感」が重要です。しかし教師は、その子どもの日常を知っていますので、どうしても被害感を低く見積もったりしてしまいます。子どもの声に耳を傾けるのが難しい場合は同じ学年の先生、養護教諭などに入ってもらうことが大事です。

– スマホ時代のいじめに対して私たちができること –

スマートフォンの普及により、インターネットによるいじめの深刻化が問題視されて言います。ただネットは閉鎖性や匿名性が高く、早期発見や早期対応が難しく、現状では多くの先生が対応に悩まれています。

現在のネットいじめの傾向はどのようなものか、そして私たち大人ができることは何か、ネットいじめの専門家である兵庫県立大学の竹内和雄先生にお話を伺いました。

Q ネットいじめの傾向と特徴を教えてください。

ネットいじめといっても、一言で説明することは難しいですが、例えば文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、ネットに関するいじめの項目として「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷やいやなことをされる」と書かれています。特定のターゲットに対して、インターネット上で「うざい」、「死ね」などの誹謗中傷を書き込むイメージでしょう。

しかし、実際はこういう例は今ではほぼありません。この種のパソコンや携帯電話等でのいじめは、ガラパゴス携帯、いわゆるガラケーが普及していた頃によく行われていました。学校裏サイトなどのような匿名性が担保されるインターネット上で、特定のターゲットに誹謗中傷どの投稿を行うというものです。

しかし、子どもたちの連絡手段がメールやSNSが中心になってからは、直接的な誹謗中傷をインターネット上で行うことは激減しました。学校裏サイトと違って、これらは記名、つまり自分の名前を出したうえでやりとりするので、自分が加害者と晒しながらの行うのです。自分の情報が履歴として残り、将来先生等に指導されるリスクが残ってしまいます。

もちろん「ネットいじめ」がなくなったわけではなく、スマホやSNSに慣れていない場合や自分が後から罰せられるリスクを感じていない場合、いじめていることがばれても問題ないほどいじめがひどくなっている状況の場合は、ネット上での誹謗中傷等が公然と行われます。最近では、特にSNSの扱いに慣れていない小学生の「ネット上でのいじめ」が目立っています。彼らが不慣れなためです。彼らは日々学習し、中学生くらいになると、自分が加害者と明示しない形でいじめを行うようになっていきます。

Q ネットといじめは関係ないものということでしょうか?

ネットといじめが関係ないわけではありません。強く関係しています。現在は、ネットはいじめのきっかけをつくる場、そしていじめる方法を相談する場になっています。

例えば、LINEを活用し、いじめターゲット以外のグループをつくったり、プロフィール等自由記述ができるステータスメッセージ(通称ステメ)に「また女王様気取り?」などと書きます。仲間内ではなんとなく誰のことかわかるが、確証はありません。真綿で首を絞めるように徐々に追い詰めていきます。そのうち、ネット上で行われる行為が教室などのリアルな場でも続くようになります。ターゲットに気づかれないよう影でからかうなどが行われ、その後は集団で無視をしたり物を隠したりしていきます。それがだんだんと深刻化していきます。

このようにネットといじめはむしろより関係性が強まっています。そして問題は、ネット上でいじめのきっかけが生まれ、いじめが巧妙化しあからさまないじめとわからないよういじめが進行していくため、いじめ対応の基本である早期発見、早期対応が難しくなっていることです。このような現状の中、私たちはこれまで以上にリアルな場で子どもたちの変化に気づけるようになることが大切です。

さらに、教師等の大人がわかる形でいじめが顕在化したときは、すでに被害者はかなりのダメージを受けてしまっています。命の危機が迫っている場合も珍しくありません。できるだけ早い介入が必要です。子どもたちは公然といじめても大丈夫と思い始めている場合が多く、正しいブレーキが効かなくなっている状況です。関係者と連携を組み、早期対応に取り組む必要があります。

Q 現状のいじめに対し、教職員ができることは何でしょうか。

3つあります。

1つ目は、子どもたちの日常の変化に気づくことです。

これまで述べてきたように、現在のいじめは、ネット上できっかけがつくられるのでいじめの早期発見が難しくなっています。また中には、被害者本人がいじめられていることに気づかないまま、いじめが進行していることもあります。状況が深刻化する前に、子どもたちの日常をしっかりと観察し、違和感を感じたらすぐに学校内での共有や早期介入することが大切です。また担任の先生だけでは気づくことに限界があります。学校が一丸となって、子どもたちを見守り、発見や共有をしやすい体制をつくることが大切です。

2つ目は、子どもたちからどんな些細な相談があったとしても、真摯に話を最後まで聴き丁寧に対応をすることです。

子どもたちにとって相談することはとても勇気のいることです。せっかく相談してくれた子どもに対して一度でも「たいしたことない」「考えすぎ」などの軽率な対応をしたら、その子どもは二度と相談してくれなくなります。いじめは誰もが被害者にも加害者にもなりうるものです。加害経験がある子は相談がしづらく、相談しても罪悪感からすべてを話すことができない場合もあります。

さらに相談してくれた子が加害の一端を担っている場合もあります。いじめに加担しないと自分がいじめられる。そういう緊張感を多くの子どもが抱えています。当然、話に矛盾が生じ、つじつまが合わないことを話します。沈黙が長く続いても子どもの話に耳を傾けてください。彼らは、大人の暴走を恐れているのです。相談した教師が勝手に加害者を指導しないか、学年集会を開いて説教を始めないか、不安です。そんなことをされたら、自分が大人に相談したことがあからさまになり、自分がターゲットになってしまいます。彼らの話をまずはすべて受け入れ、最後まで耳を傾けること。そのうえでどのような解決を目指すか、ゆっくりと時間をかけて相談しながら話を進める必要があります。もちろん、相談者への指導も必要です。しかし、それはすべての問題が解決してからです。

3つ目は、日常の子どもたちの満足感を高めることです。

いじめを行う子どもはいじめたくていじめているわけではないことが多々あります。現状に何らかの不満があり、自分の優越感や満足感を高めるためにいじめを行なっている場合もあります。これまで様々な学校を見てきましたが、合唱コンクールや文化祭などで盛り上がっているとき、いじめが減ります。成績が良かったり、部活で活躍したりしている子はいじめに関わりません。自分の生活に満足しているからです。だからこそ私たち大人は、子どもたち一人一人が主人公になれるような機会をつくることが必要です。

いじめ防止対策として先生が行うべきことに特別なものはありません。子どもたちを丁寧に見守ること、真摯に話を聴くこと、そして楽しい授業、楽しい学校をつくることを私たち大人は行うべきと考えています。

竹内 和雄(たけうち かずお)

兵庫県立大学環境人間学部准教授(教職担当)

公立中学校で20年生徒指導主事等を担当(途中小学校兼務)。寝屋川市教委指導主事を経て2012年より現職。生徒指導を専門とし、いじめ、不登校、ネット問題、生徒会活動等を研究している。文部科学省、総務省等で、子どもとネット問題についての委員を歴任。NHK「視点・論点」「クローズアップ現代」等にも出演。毎日新聞に「竹内先生の新教育論~スマホっ子の風景」連載中。2014年ウィーン大学客員研究員。

各種リンク (相談窓口等)

子どもたちに伝えたい各種情報(相談窓口等)

【1】「トップアスリートから子どもたちへ伝えたいこと」(#standbyyou)
https://youtu.be/Rq4S0J0V6nY

【2】「24時間子供SOSダイヤル」について(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

【3】子どもの人権110番(法務省)
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html